
自らが義務として負っている「債務」を果たさないことが「債務不履行」
ビジネスにおいて「債務不履行」や手形の「不渡り」はタブーで、事業の存続にも大きな影響を及ぼすということは、おそらく多くの人たちが理解しているかと思われます。もっとも、これらの言葉は具体的にどのような状況のことを意味しているのでしょうか?
そもそも「債務」や「債権」という言葉自体も、契約書上などで当然のように使用されているものの、きちんとそれらの意味について説明を受けた記憶があまりないかもしれません。そこで、A社が自社の製品を製造するために、B社から材料Cを仕入れたケースで説明してみましょう。
A社側は購入したCを受け取る権利を有する一方で、その代金を支払う義務を負っています。言い換えれば、この取引を行った時点でCを受け取るという「債権」を得るとともに、その代金を支払うという「債務」が生じたことになります。
これに対し、B社はCを引き渡す義務が生じると同時に、その代金を受け取る権利を得ています。すなわち、B社にとってはCを引き渡すことが「債務」で、その代金を受け取ることが「債権」に相当するわけです。
そして、その言葉の通りで「債務不履行」は「債務」を履行(実行)しないことを意味しています。先述の例で言えば、A社がCを受け取っているのにその代金を支払わないことと、B社が代金を受け取っているのにCを引き渡さないことが該当します。
なお、その際に「債務」を果たさなかった理由は問われません。故意であるケースはもちろん、支払い期日を間違えていたような過失のケースであっても、「債務不履行」とみなされます。
民法では、「債務不履行」を3つの種類に分類している
民法では、①履行遅滞、②履行不能、③不完全不履行という3つの種類に「債務不履行」を分類しています。①とは、債務の履行が可能であったにもかかわらず、約束の期日に遅れてしまったケースを指しています。
続いて②は、債務の履行が不可能となってしまった状態のことを意味します。ただし、お金の支払いや返済に関する「金銭債務」については②とみなされることがなく、債務者が代金を持ち合わせていないケースであっても①の「履行遅延」として扱われます。
残る③は、「債務」の一部を履行したものの、残りは履行していないというパターンのことです。運送会社に配送を依頼したところ、輸送中の不備で到着した時点で荷物が破損していたケースがその一例です。
③においても、「金銭債務」については対象外となります。たとえば、借入金の一部を返済したものの、残債の支払いが滞っているという場合は、③ではなく①の「履行遅滞」とみなされます。
「債務不履行」が発生すると、「債権者」は3つの対抗策を打てる
「債務不履行」が発生すると、その「債権者」は不利益を被ることになります。そこで、①契約解除、②損害賠償請求、③強制執行といった対抗策を打つことが可能です。
契約は社会的な約束事であり、法的な拘束力もあることから、通常は容易に解除できません。しかしながら、「債務不履行」となった場合、当事者同士が合意するか、あらかじめ契約書において解除に関する定めが記載されているか、民法の規定に合致しているかのいずれかに該当すれば、①の契約解除が可能となります。
②はニュースなどでもよく耳にする言葉で、契約違反や違法行為などによって受けた被害に相当する金銭の支払いを、その原因をもたらした相手に求めることです。債権者は「債務」を履行しない相手に対し、実際の損害分を請求できます。
③は債権者が裁判で債務者を訴えて勝訴したにもかかわらず、それでも「債務」が履行されない場合の最終手段です。国が債務者の財産を差し押えるという手続きを行い、「債権」の回収を図ります。
「不渡り」とは、当座預金の残高不足で期日に手形や小切手が決済できないこと
一方、同じくビジネス上のタブーである「不渡り」とは、当座預金の残高不足によって支払い期日に手形や小切手が決済できないことを意味しています。「不渡り」が発生すると、手形や小切手を受け取った側(受取人)に迷惑が及ぶことになります。
手形と小切手は主に企業間取引における支払い手段として用いられており、金額や支払期日を記載して発行され、受け取った側は銀行で現金化できます。
手形や小切手を持ち込まれた銀行は、それらを発行した「振出人」の当座預金から現金を引き出して「受取人」に支払います。それが決済と呼ばれる手続きで、当座預金に決済分の残高がなければ支払うことができず、「不渡り」となるわけです。
厳密に言うと「不渡り」は、①0号不渡り、②1号不渡り、③2号不渡りという3つのパターンに分類されています。そして、一般的に言われている「不渡り」は②のことです。
①は記載ミスがあったり、呈示期間(銀行で現金化できる期限)が過ぎていたりするケースです。「振出人」の信用面に影響を及ぼすものではなく、社会的に「不渡り」とみなされることもありません。
②は先述したように、当座預金の残高不足で決済が行えないケースです。残高不足のみならず、「振出人」が当座預金を解約していて決済できない場合も該当します。
①と②に当てはまらないケースが③で、偽造や盗難、詐欺、「受取人」の契約不履行などによって発生した「不渡り」です。残高不足が原因ではないため、「振出人」は「異議申し立て」という手続きを行い、「不渡り」として扱わないことを銀行に要求できます。
6カ月以内に「不渡り」が2回発生すると事実上の倒産に
②の「1号不渡り」が発生すると「振出人」は「不渡り処分」を受け、その事実が手形交換所の加盟銀行に通知されます。その結果、「振出人」の信用力は低下し、新規の融資の審査などにおいて不利に働く恐れが出てきます。
さらに、6カ月以内に2度目の「不渡り」を出してしまうと、銀行取引の停止処分を受けてしまいます。2年間にわたって当座預金を通じた取引や借入が不可能となり、いっそう資金繰りに窮することになるのです。
こうして信用力が著しく低下すると運転資金の調達もままならず、事業の継続が極めて困難になってきます。2度目の「不渡り」を出した企業に関するニュースで「事実上の倒産」という表現がよく用いられるのは、事業継続に関して赤信号が点灯しているからです。
「不渡り」が発生した場合、その「受取人」は銀行を通じた現金化が不可能となりますが、「振出人」に直接支払いを求めることは可能です。もっとも、無い袖は振れない状況に陥っているケースが多く、必ずしも資金を回収できるとは限りません。
まとめ:「債務不履行」や「不渡り」とは無縁の資金調達を心がけよう!
「債務」という自らの義務を果たさない「債務不履行」と、当座預金の残高が足りなくて手形や小切手を受け取った側が現金化できない「不渡り」は、どちらもビジネスを営むうえで極力避けたいタブー。支払いに困ってそのような事態に陥る前に計画的な資金調達を進めるのが賢明で、「売掛債権」を即日現金化することも可能なファクタリングなどを上手に活用し、どうにかして窮地を脱したいところです。
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