「フリーランス保護新法」って何?インボイス制度とは関係があるの?

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    「フリーランス保護新法」って何?インボイス制度とは関係があるの?

    「フリーランス保護新法」とは、どのような法律なのか?

    「フリーランス保護新法」と呼ばれる法律の制定が国会で議論されており、2023年10月からスタートするインボイス制度との関連性も取り沙汰されています。今回はこの話題にスポットを当ててみましょう。

    ものがあります。契約上不利になりがちなフリーランスを守るための法律で、フリーランスとしては特に理解しておきたいものです。
    ただ、現時点では法律案であり、既に施行されている法律ではありません。今回はこれから成立する予定であるフリーランス保護新法とはどのような法律であるのか、基本的な知識について解説します。

    「フリーランス保護新法」とは、フリーランスとして働く人たちが発注先から不利なことを強要されず、適正な取引を行えることをめざしたものです。内閣官房は2022年9月13日に「フリーランスに係る取引適正化のための法制度の方向性」公開するとともに、パブリックコメントの募集も開始しました。

    パブリックコメントとは、法律や政策などを策定するに当たり、事前にその素案を公表し、一般から寄せられた意見や課題点などを考慮しながらブラッシュアップを図っていくという制度です。当初、この法律案は2022年秋の臨時国会において提出される方針でしたが、自民党内で批判が続出したことから議論がさらに進められ、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案」と改称したうえで2023年の通常国会で提出されました。

     

    この法案において定義されるフリーランスとは、どういった人たちが該当する?

    法律案ではフリーランスのことを「特定受託事業者」と称し、以下の2つの条件のいずれかを満たす人たちであると位置づけています。

    ①個人であって、従業員を使用しない者
    ②法人であって、代表者以外に他の役員(理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、監事、もしくは監査役、またはこれらに準ずる者)が存在せず、かつ、従業員を使用しない者

    つまり、単独で業務委託を受けている個人事業主であったり、法人格を有しているものの、社長(本人)以外に社員が存在しなかったりするケースが「特定受託事業者」に該当するということです。派遣社員やパートのように、勤務先と雇用契約を結んでいる場合は対象外となります。

    先述の条件に該当すれば、特に職種は問われないようです。いくつか具体例を挙げれば、プログラマーやシステムエンジニア、デザイナー、ライター、コンサルタント、スタイリスト、コーディネーターなどといったところでしょう。

     

    適切な取引を行うために、発注側にはいくつかのことが義務づけられる

    フリーランスが発注先と結んでいるのは、雇用契約ではなく、業務委託契約です。各々の案件ごとに業務が委託され、その成果に対して報酬が支払われるという取り決めになっています。

    本来であれば、業務委託契約において発注側と受注側は対等な関係にあります。しかしながら、受注側は「仕事をもらっている」といった負い目のような感覚を抱きがちですし、「下請け叩き」などという言葉もあるように、高圧的に振る舞う発注側が存在することも確かでしょう。

    そこで、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案」はフリーランスが発注側と対等な関係で適正な取引が進められるような内容になっています。フリーランスに業務を委託する事業者に対して、次のような義務が課されるようになっているのです。

    ・契約時に、仕事内容や報酬の金額を書面やメールで明示すること
    ・委託先の事業者が業務の提供を完了した日から60日以内に報酬を支払うこと
    ・仕事内容の不当な変更や報酬の減額を行わないこと
    ・相場を大幅に下回る報酬の金額を設定しないこと

     

    従来の「下請代金支払遅延等防止法」では、フリーランスが守られていなかった

    発注側に義務づけられた条件の中で「60日以内に報酬を支払うこと」というものは、「下請代金支払遅延等防止法」という法律においても定められているものです。その名称からも想像がつくように、下請け事業者に対して不当なことが強要されることを防ぐのがその目的でしたが、この法律が制定された頃にはまだフリーランスという働き方が一般的ではありませんでした。

    したがって、次のような条件を満たさなければ「下請代金支払遅延等防止法」が適用されませんでした。

    ・発注する事業者の資本金が1000万円を超えている
    ・下請事業者の資本金が1000万円以下である

    このうち、資本金1000万円以下という条件を満たすフリーランスはけっして少なくないことでしょう。もっとも、その一方で発注する側が必ずしも資本金1000万円超であるとは限りません。

    発注する側の資本が潤沢でなければ、支払いの遅延や未払いなどといったトラブルが起きるリスクもおのずと高くなってくるのが現実でしょう。「下請代金支払遅延等防止法」はそういったケースに対する保護が疎かだったと言わざるをえません。

    これに対し、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案」では発注側の資本力に関わらず、法定した義務を果たすことが求められてきます。

    フリーランスは、労働基準法をはじめとする労働法の適用を受けないことも大きな問題点でした。労働時間に関する制限もないため、発注側の言いなりとなって理不尽なスケジュールの案件を受けざるをえないケースも少なくありませんでした。

     

    インボイス制度が始まると、フリーランスと発注側とのトラブルが頻発する?

    「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案」が国会に提出されたことには、今秋からのインボイス制度導入も関係しているようです。この制度がスタートすると、消費税を納める事業者は「適格請求書(インボイス)」の要件を満たした請求書・領収書・納品書・レシートを使用することが求められます。

    そして、インボイスの発行事業者(適格請求書発行事業者)として登録しなければなりません。本来、消費税の免税事業者(課税売上高1000万円以下の法人や個人)は必ずしもインボイスの発行事業者として登録する必要はありません。

    しかし、インボイスとして認められない請求書を受け取った取引先(発注側)は、その案件において「仕入税額控除」を利用できず、納付すべき税額が多くなってしまいます。そのため、インボイスを使用していないフリーランスとの取引を敬遠する動きが広がる可能性が考えられます。

    取引先との関係を悪化させたくなければ、免税事業者もあえてインボイスの発行事業者として登録し、消費税を納めることを余儀なくされてしまいます。課税負担の分だけ報酬の値上げを発注側に求めたとしても、特に正当な理由もなく応じてくれない恐れもあります。

    このように、インボイス制度に伴ってフリーランスと発注側との取引上のトラブルが増加する可能性が考えられるため、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案」では、インボイス制度に関連して次のような行為が禁じられています。

    ・免税事業者に対して消費税相当額を支払わない
    ・課税事業者になった場合に、発注側が一方的に値上げ交渉に応じない
    ・取引の停止などを掲げて、課税事業者になることを迫る

     

    まとめ:インボイス制度は悩みの種だが、法整備はフリーランスにとって朗報!

    「フリーランス保護新法」改め「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案」は、多様な働き方の普及に対応し、これまで立場が弱かったフリーランスの人たちが正当な取引を行えることをめざしたものです。国会を通過して法律が制定される日はまだ定かでありませんが、その行方は大きな関心事と言えるでしょう。

    一方、これまで消費税の免税事業者であったフリーランスの方々にとってインボイス制度の導入は悩ましいイベントでしょう。法整備の進展とともに、同制度の中身についても今からしっかりと理解して対策を打っておきたいところです。

     

     

     

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