近年、フリーランスとして働く人が増える一方で、報酬の未払い、不当な契約条件、ハラスメントなどの問題が深刻化しています。こうしたフリーランスのかかえる問題を解決し、安心して働ける環境を整えるために、「フリーランス保護新法」が制定されました。
この記事では、フリーランス保護新法の概要や対象者、具体的な内容、さらにフリーランスにとってのメリットを詳しく解説します。
フリーランス保護新法とは何か
フリーランス保護新法とは、自由な働き方として広がるフリーランスを様々なトラブルから守るために制定された法律です。以下で、フリーランスの増加に伴って発生する課題、法整備が必要となった背景、新法の具体的な目的や内容を見ていきましょう。
フリーランス増加に伴う課題
フリーランスという働き方は、多様な働き方を実現する手段として注目されてきました。
しかし現実には、報酬が支払われなかったり、市場相場より著しく低い単価を提示されたり、あるいは契約書すら交わさないまま仕事が始まったりするなど、多くの問題が存在しています。
企業とフリーランスの間には情報量や交渉力に差があるため、不当な条件下でも仕事を断りづらいという構造的な課題も指摘されてきました。
法整備の背景
こうした状況を放置すると、フリーランスとして働く人々のの生活が不安定になるだけでなく、社会全体の生産性を低下させる可能性があります。
そこで政府は、フリーランスの取引環境を整備し、適正な契約条件を確保する目的で「フリーランス保護新法」を制定しました。正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」と言います。
従来の「下請法」や「独占禁止法」だけでは対応しきれなかった課題を補完し、フリーランスが安心して働ける仕組みを構築することを目指しています。
目的・内容
フリーランス保護新法では、フリーランスが不当に低い報酬を押し付けられたり、支払いが遅延したりするのを防ぐため、発注企業に対して取引条件の明示や報酬支払期日の設定を義務付けています。
また、業務委託契約の透明性を高め、トラブルを未然に防止するために契約書の作成を求める点も重要な特徴です。さらに、ハラスメント防止策や契約解除時の手続きなど、フリーランスを保護するためのさまざまな規定が整備されています。
新法の対象者
フリーランス保護新法が適用されるのは、「特定受託事業者」に該当する個人事業主や法人です。特定受託事業者とは、次の条件を満たす場合が対象となります。
- 従業員を雇用していないこと
週の所定労働時間が20時間以上、かつ31日以上の雇用が見込まれる従業員を抱えていない。法人でも代表者のみで役員や従業員がいない場合は該当。
例:一人で活動している個人事業主、代表者一人の法人(一人社長)など
- 雇用契約以外の形態で業務を受託していること
企業やクライアントと雇用契約を結ばず、業務委託契約などで報酬を得ている。
例:フリーライター、デザイナー、コンサルタント、インストラクター、配達員など。
- 業務内容が物品の製造・加工、情報成果物の作成、役務の提供などであること
フリーランス保護新法という名前ですが、副業として業務委託を受けている方も、上記の条件を満たせば、保護の対象となります。
ただし、従業員を雇用する個人事業主や法人、フリーランス同士の取引、消費者との取引などは新法の適用外です。
フリーランス保護新法の具体的内容
フリーランス保護新法では、フリーランスと発注者の間の公平な取引を実現するための様々なルールが定められています。
取引条件の明示義務から報酬支払いの期限設定、禁止される不当な行為、募集情報の適切な表示、育児・介護への配慮、ハラスメント対策、そして契約解除時の手続きまで、幅広い保護措置が盛り込まれています。以下で、それぞれの内容について詳しく見ていきましょう。
取引条件の明示義務
発注事業者はフリーランスに業務を委託する際、業務内容や報酬額、支払期日などを明確に伝える義務があります。
これは口頭ではなく、必ず書面や電子メールなど記録が残る形で行う必要があります。書面化することで認識のズレを防ぎ、後から「言った・言わない」のトラブルを避けるのが狙いです。
報酬支払期日の設定と遵守
フリーランスへの報酬は、納品・業務完了後60日以内のできる限り短い期間内に支払わなければいけません。「90日後支払い」「120日後支払い」といった長期サイトに悩まされてきたフリーランスにとって、大きな改善点です。
支払遅延はフリーランスの生活に影響を与えます。家賃や光熱費の支払いは待ってくれないからです。
この規定により、フリーランスの資金繰りが安定し、本業に集中できる環境がと整います。万が一支払いが遅れた場合、発注者は責任を問われる可能性があるので、双方とも期日管理を徹底しましょう。
発注事業者による禁止行為
フリーランスを一方的に不利な状況に追い込む行為を防ぐため、以下の7つが禁止行為として明確化されました。
- 受領拒否:正当な理由なく納品物を受け取らない
- 報酬の減額:契約で定めた報酬を一方的に引き下げる
- 返品の強要:不当な理由で納品後に返品させる
- 買いたたき:相場より著しく低い報酬で発注する
- 購入・利用の強制:特定商品・サービスの購入を強要する
- 不当な経済上の利益提供の要請:無償作業や値引きなどを求める
- 不当な給付内容の変更・やり直し:契約外の追加作業を無償で求める
これらの行為が見受けられる場合、フリーランスは法律に基づいて対処を求めることができます。
募集情報の的確表示
発注事業者がフリーランスを募集する際、業務内容や報酬に関する情報を正確に開示する義務があります。虚偽や誤解を招く表現を禁止することで、フリーランスが正しい情報をもとに契約を結ぶかどうかを判断できるようにしています。
育児・介護と業務の両立への配慮
発注事業者は、6ヶ月以上の継続契約を結ぶフリーランスに対して、育児や介護との両立を妨げないよう配慮しなければいけません。
例えば、納品締切の柔軟化や在宅での作業許可など、フリーランスのライフステージに応じた働き方をサポートする必要があります。
ハラスメント対策の義務化
継続的な業務委託契約を結ぶフリーランスに対して、発注事業者は、ハラスメント防止策を整備することも義務化されました。
発注事業者は地位の乱用を避けるとともに、相談窓口の設置や研修を実施するなど、具体的な予防策を講じる必要があります。フリーランスが安心して仕事に集中できる環境をつくるためにも、早めの対策が求められます。
契約解除時の事前予告と理由開示
発注事業者が6か月以上の継続契約を解除する場合、少なくとも30日前までに書面または電子メールで通知しなければなりません。
さらに、フリーランスから理由を求められた場合には速やかに回答する義務があります。急な契約終了によるトラブルを防ぎ、フリーランスの生活や事業継続に配慮する制度として注目されています。
業務委託契約書の作成義務化でファクタリングが利用しやすくなる
フリーランス保護新法がもたらす思わぬメリットの一つが、ファクタリングの利用のしやすさです。業務委託契約書の作成が義務化されることで、フリーランスの資金調達環境が大きく改善される可能性が高まっています。
ファクタリングとはどのような仕組みなのか、契約書の明確化がどう影響するのか、そしてフリーランスのキャッシュフロー安定にどう貢献するのか、それぞれの側面から詳しく見ていきましょう。
ファクタリングとは
ファクタリングとは、売掛債権(請求書)をファクタリング会社に買い取ってもらうことで、支払い期日を待たずに早期に資金化する手法です。
クライアント企業の支払いサイトが「翌月末」「翌々月末」など長期化しがちなフリーランスにとっては、キャッシュフロー改善の有効な手段として注目されています。
「仕事はしたけれどお金が入るのはずっと先」という状況から抜け出し、安定した事業運営を実現するための強力なツールと言えるでしょう。
業務委託契約書を作成することで債権の存在証明が容易になる
ファクタリング会社は審査の際、売掛先企業の信用力だけでなく、「その売掛債権が正当に成立しているか」を重視します。口頭ベースの契約や不明瞭な請求書では債権の証明がしづらく、ファクタリングの審査が通りにくいケースもありました。
しかし、フリーランス保護新法により業務委託契約書があれば仕事の内容や報酬が明確になり、債権の存在を証明しやすくなります。必要なときにスムーズに資金を確保できるようになるでしょう。
キャッシュフローを安定させる手段として
フリーランスは毎月決まった給与が入る会社員と違い、月々の収入が不安定になりやすいという課題があります。大きな案件を納品しても、報酬の入金が数か月先になることも珍しくありません。その間の運転資金や生活費をどう確保するかが常に頭を悩ませる問題です。
その点、ファクタリングを利用すれば将来の入金を前倒しで受け取れるため、キャッシュフローの安定が期待できます。さらに、ファクタリングは融資ではなく債権の売却なので、借入金としてバランスシートを圧迫せず、将来の資金調達の選択肢を狭めないメリットもあります。
まとめ
フリーランスの増加とともに、報酬未払いや契約の不透明さなどの問題が浮き彫りになりました。こうした課題を解決するために制定された「フリーランス保護新法」は、フリーランスと発注者の間に公正なルールを設けるものです。
この法律では、取引条件の明示や報酬支払期日の遵守を義務付け、不当な契約条件の禁止など、フリーランスを守るための具体的な規定が盛り込まれています。また、育児・介護への配慮やハラスメント防止策の整備、契約解除時の事前通知なども義務付けられました。さらに、業務委託契約書の作成義務化は、ファクタリングの利用が容易にし、フリーランスの資金繰り改善にも貢献します。

