「売掛債権」を用いる点は共通しているが、似て非なる資金調達法

ファクタリングとは、取引先に商品やサービスをすでに納入しているものの、まだ代金の支払いが行われていない「売掛債権」を用いた資金調達方法です。「売掛債権」をファクタリング業者に買い取ってもらうことで、支払い期日に先駆けて現金化することが可能となります。

「売掛債権」による資金調達法には他にもABLと呼ばれるものがあるものの、両者は似ているようでまったく異なる仕組みになっています。
そこで、今回はファクタリングとABLの違いについてわかりやすく説明しましょう。

 

ABLとは、保有している「売掛債権」や動産を担保とする銀行融資

ABLはAsset Based Lendingの略称で、直訳すると「資産を担保とする融資」ですが、この資産は「動産・売掛債権」に限定されており、日本語では「動産・売掛債権担保融資」という呼称になります。事業者が保有している動産（商品や原材料の在庫など）や「売掛債権」を担保とすることで、金融機関から融資を受けるという資金調達方法です。

ABLを取り扱っているのは銀行で、融資の利用者が保有している「動産・売掛債権」を査定し、その評価に応じた資金を貸し出します。そして、債務不履行となった（利用者の返済が途絶えた）場合は、担保となっている「動産・売掛債権」を換金して返済に充当てられます。

銀行からまとまった資金の融資を受ける際には、不動産を担保に充てるのが一般的です。
その点、ABLなら不動産を所有していない事業者でも利用可能となります。

ただし、ABLの審査においては事業の継続性（今後も問題なくビジネスが続けられること）が重視され、担保にする「売掛債権」や動産の価値がシビアに査定されることになります。加えて、ABLでは銀行と利用者の間で個別に定められた「コベナンツ」と呼ばれる約束事項を守る必要がありますし、融資後も担保となっている「売掛債権」や動産の状況を定期的にモニタリング（報告）する義務が生じます。

 

一般的な融資以上に時間と手間がかかり、速やかな資金調達は難しい

事前の準備のことまで含めて、一般的な融資に比べて時間や手間がかかることもABLの注意点だと言えるでしょう。言い換えれば、急に資金繰りが苦しくなった局面などでの調達手段としては適していないということです。

また、融資の審査では担保に充てる「売掛債権」や動産の価値のみならず、利用者（融資を受ける人）の信用力も評価されることになります。無事に融資を受けられたとしても、先述した「コベナンツ」に抵触するようなことがあると、適用金利引き上げなどのペナルティが課せられる点も要注意です。

「売掛債権」を担保とする場合、ABLの融資額は「毎月発生する売掛債権の70％～90％」となるのが主流のようです。ただし、この掛目は金融機関によって異なりますし、利用者の信用力も考慮して決定されます。

 

ファクタリングは融資ではなく、「売掛債権」の売却による現金化

一方、ファクタリングはABLとは違い、融資ではありません。ファクタリング会社に「売掛債権」を売却することによって現金を得るという資金調達方法です。

したがって、利用に当たって実施される審査では、取引先（売掛先）の信用力が重要視されることになります。不払いの可能性のある「売掛債権」を買い取ることは、ファクタリング会社にとって大きなリスクとなってくるからです。

ただ、２社（２者）間ファクタリングという契約形態の場合は、利用者のことも審査されます。２社間ファクタリングとは、「売掛債権」の所有者とファクタリング会社との間で行われる取引で、原則として売掛先は関与しません。

ファクタリング会社は、売却希望の「売掛債権」が実在し、売掛先の信用力に問題がないかどうかを確かめます。併せて、過去数カ月間における利用者の預貯金通帳（入出金記録）を検証し、資金繰りに苦しんでいないかどうかをチェックします。

利用者の資金繰りも調べるのは、２社（２者）間ファクタリングの場合、売掛先は「売掛債権」が売却されていることを認知していないからです。約束の期日を迎えると、その代金は利用者の預貯金口座にいったん振り込まれ、それをファクタリング会社に送金することで取引が完結するようになっています。

こうして資金回収を委託することから、２社（２者）間ファクタリングでは利用者の審査も重視されているわけです。とはいえ、ABLのような融資と比べれば審査の内容ははるかにシンプルで、所要時間も短いと言えるでしょう。

 

今すぐ資金を調達したい場合にはファクタリングのほうが向いている！

中小企業の資金調達手段として経済産業省や金融庁も推奨しているABLですが、その利用が向いているのは、多くの在庫を抱えるケースが多いビジネスを営んでいる会社で、一例として挙げられるのがアパレルでしょう。信用力が相対的に高い取引先の「売掛債権」を所有中で、急ぎの資金調達を迫られているという場合は、ABLよりもファクタリングのほうを選ぶのが無難だと言えます。

ファクタリングの手数料に比べるとABLの利息負担は軽いというメリットはあるものの、通常の融資以上に手間と時間を要し、待たされた挙げ句に審査に通らなかったというパターンも想定されます。融資を受けられたとしても、その後のモニタリングのことを煩雑に感じるかもしれません。

 

まとめ：ABLとファクタリングの違いを理解し、自分のニーズに合っているものを選ぶ

ABLは銀行が取り扱っている融資の一種で、「売掛債権」や動産を担保とします。これに対し、ファクタリングは「売掛債権」を買い取ってもらって現金化するという資金調達方法です。多くの在庫を抱えることが多いビジネスを営んでいるならABL、できるだけ迅速に資金を調達したいならファクタリングを選ぶのが正解でしょう。

 

 

 

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